(2024年7月30日 財団8周年記念シンポジウムより)
鈴木 寛(すずき かん)さん
東京大学公共政策大学院教授
慶應義塾大学SFC特任教授(前教授)
元文部科学副大臣、前文部科学大臣補佐官

慶應SFCのAO入試の取り組みから
探究学習の大切さに気づいて活動していた人たちは何年も前からいたのですが、ただそれが評価されずにいました。ですから、今日ここでこのように皆さんの様々な取り組みを聞いて、共有できることをとても嬉しく思っています。
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)では1990年からAO入試、いわゆる総合型選抜をスタートしました。当時は特に地方の高校からは大変な反発を受けましたが、これをもっと全国に広めようと、入学定員の3割を総合型選抜で選考しようということで、国立大学から広がっていき、現在では全国の大学で取り入れられています。

私のSFCのときの教え子だったカタリバの今村久美さんと「全国高校生マイプロジェクトアワード」という高校生の学びの場をつくっています。11年前に始めたときの参加者は18名、それが2024年3月には、10万人を越えました。それだけ広がっているのです。これまでは高校時代には、野球をやっていた、ブラバンをやっていた、と話していたと思いますが、ここに「探究をやっていた」という高校生が増えていくと私は思います。
大切なのは自立学習、自己肯定感
日本の高校生の学習レベルは世界で見ても決して低くないのです。ところがこれが20歳を過ぎ、社会人になるととたんに下がっていきます。つまり受験だといってやらされる勉強はできるのだけれど、それがなくなるととたんに学ばなくなる。自立学習が弱いのです。ですから、高校生のころまでに、探究学習によって、自己肯定感、自己効力感を身に着けることが大切だと、私は考えています。
それには、「自由」が必要です。自由な発想で自由に学ぶ。そこから自立学習の力をつけていくことができます。

受験勉強こそ探究
探究学習が大切なのはわかるのだけれど、やはり受験の方が大切、という声をよく聞きます。
現在、共通テストの内容がかなり変わってきています。しっかりと深い学びをしていないと回答できない、うわべだけのこれまでの受験勉強では回答できないものになってきているのです。
ですから、探究学習こそが受験勉強、そういう時代がきていると、私は考えます。